2023年5月6日(土)の東京競馬場。
3Rの3歳未勝利ダート1400mでレディアスに騎乗した津村明秀騎手が通算600勝を達成した。
600勝のお立ち台コメントからは以下の言葉があった。
「足りないところがある。」
「取りこぼしがある。」
「数字は気にせず、一つ一つ結果を出したい。」
「ビッグレースの活躍を自分自身が一番待ち望んでいる。」
中央競馬の騎手は大きく分けて、関東圏(美浦)と関西圏(栗東)に分かれて所属している。
関東圏(美浦)の所属騎手として、現在37歳。騎手として最も脂がのってきた年齢だ。
騎手は、大体30代の半ばから40代前半が最も活躍する時期になる傾向がある。
これは、若さによる体力面より、経験値という要素が大きく占めるからだろう。
津村明秀騎手、2023年は年始から好調。
過去、年間の最多勝は2018年に記録した52勝。
その勝利数を上回るペースで勝っている。
既に重賞も勝っている。
2023年3月26日(日)の中山11RのマーチS(GⅢ)をハヤブサナンデクンで優勝。
津村騎手は競馬関係者からの信頼が厚い。
関東圏(美浦)・関西圏(栗東)に関わらず有力厩舎からの騎乗依頼が多くある。
それだけ競馬関係者からの評価が高い騎手。
ここで、デビュー当時を振り返りたい。
2004年に鈴木伸尋厩舎所属で騎手デビュー。
競馬学校時代の同期には、川田将雅、吉田隼人、藤岡祐介、丹内祐次らがいる。
現在の中央競馬の騎手の中で、正に中心的な存在になっている世代だ。
そんなハイレベルの世代にあって、アイルランド大使特別賞を受賞したのが津村明秀騎手だ。
アイルランド大使特別賞とは、競馬学校の卒業時に最も成績優秀だった生徒に贈られる賞である。
同期から当時を振り返るコメントでは、当時、いかに津村騎手の評価が高かったかが分かるものがある。
『津村か。津村以外か。』
それほど、競馬学校時代の評価が高かった存在である。
もっと活躍していても不思議ではない騎手であるが、中堅どころとして定着している。
津村明秀騎手、本人のコメントにあるように、ビッグレースのタイトルが欲しい。
過去、GⅠでのチャンスはあった。
直近のチャンスはカレンブーケドールだった。
2019年のオークス2着。(1着馬はラヴズオンリーユー。)
2019年の秋華賞2着。(1着馬はクロノジェネシス。)
2019年のジャパンC2着。(1着馬はスワーヴリチャード。)
結果としてGⅠを勝てなかったが、悪い騎乗はしていない。
この時の勝ち馬のその後を見れば、相手が悪かった。
もう1頭、忘れてはいけない馬がいる。
ダート戦線で追い込みを得意としたカフジテイクだ。
2017年のフェブラリーS3着。(1着馬はゴールドドリーム。)
1番人気でレースを迎えた。
GⅠ制覇の最大のチャンスだった。
この時は、前哨戦の根岸S(GⅢ)から騎手起用で注目が集まっていた。
関西圏(栗東)の湯窪幸雄厩舎に所属していたカフジテイク。
2016年10月10日の東京ダート1400mのグリーンチャンネルCで津村騎手と初コンビを組んだ。
後方からの豪快な追い込みで見事に1着。
この時の騎乗内容が評価され、継続騎乗となる。
次走の武蔵野S(GⅢ)3着、次々走のチャンピオンズC(GⅠ)4着。
勝ち切れない。
しかし、それほど負けてもいなかった。
それだけに関係者は騎手の乗り替わりを決断する。
フェブラリーSの前哨戦である根岸S(GⅢ)で福永祐一騎手に乗り替わった。
結果は鮮やかな追い込みで見事に1着を決めた。
この時の津村騎手からは、以下のコメントがあった。
「悔しかった。福永祐一騎手はさすがだった。」
この流れで、フェブラリーSには騎乗できないと思われた。
しかし、ここで思わぬ事態が起こる。
福永祐一騎手が負傷したのだ。
騎手を誰にするのか?
関係者は悩んだ末に、津村明秀騎手に騎乗依頼をする。
フェブラリーSのスタートが切れらた。
後方に構え、大外から追い込む。
先に抜け出していたゴールドドリームには0.1秒差届かず。
上り3Fは最速の34.9秒だった。
当日は冬の東京開催のダート良馬場。
終始、外目を回っていたレース内容から、かなりの脚を使っていた。
レース後の津村騎手のコメントがあった。
「後方から構えすぎた。」
コメントどおり、この時は後ろから慎重に行きすぎたのかもしれない。
結果、勝てたかは分からないが、乗り方一つで1着はあったかもしれない。
津村明秀騎手、2023年で騎手20年目となった。
過去の悔しい経験が生きる時が来るのは、そう遠くない。